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ヨーガによる健康増進法

今から3000年近い前に書かれたヨーガの聖典の一つである「白いラバの仙人 のウパニシャッド/シュヴェーターシュヴァタラ・ウパニシャッド」というヨー ガの聖典にはこんな事が書かれてあります。身体の中にヨーガの特別な性質が現れると、その賢い人間はヨーガの火の身体を手に入れたのであり、その者は病気にかかることもなくなり、老化もせずに死ぬこともなくなる。 このヨーガの特別な性質が現れると、その人間の身体はまず、軽くなり、その身が健やかになり、落ち着きが生じ、顔色も清らかになり、 声も心地 よいものになり、身体からも良い香りがするようになり、排泄物も少なくなる」  (シュヴェーターシュヴァタラ・ウパニシャッド第2章12,13節 )

 

ここで言われているヨーガと言うのは、単純にヨーガ体操だけではありません。 そうではなく、呼吸法も瞑想法も、そして食餌法から生活全般のもの の考え方 や行動の仕方までその範囲に入れられる、ヨーガ的な生活の送り方のこと を言っているのです。 ヨーガ的な生活を送るようになると、すこぶる元気になることは、ヨーガ行者さ んたちには昔から分かっていたのです。なぜ元気になるのでしょうか? インドにおける伝統的ヨーガ インドにおける伝統的ヨーガは大きく分けて以下の四種類に分類できます。

1)ギヤーナ・ヨーガ
2)バクティ・ヨーガ
3)カルマ・ヨーガ
  4)ラージャ・ヨーガ

以上の四種類です。これらの内、四番目のラージャ・ヨーガは、ラージャ/王様 という文字が冠されているように、他の全てのヨーガの技法を統合的に内包している王道のヨーガです。 そして現代のヨーガ療法もこのラージャ・ヨーガを 基本として健康促進が図られるのです。 特にラージャ・ヨーガの技法中でヨーガ療法として使えるのは以下の三種の技法です。

1)アーサナ等の肉体を動かすヨーガ技法

この肉体を動かす伝統的ヨーガは“アーサナ”と呼ばれ、座法と和訳され、超人 の 瞑想修行に耐えられる肉体造りが主眼となっています。強靱な肉体と 精神を育 てる為にこの数百種類が数えられるアーサナ群があります。 そうした伝統的ヨーガのアーサナ・エッセンスを入れたアイソメトリック・アー サナをヨーガ療法としてクライアントさんたちに指導し、強靱な四肢を もって 介護予防にも無縁の老人たちや多くのストレス疾患患者さんたちに健康回復効果 を提供します。 現代の運動生理学における筋肉トレーニング様式は以下のように分類されている 。 アイソメトリック(等尺性収縮)運動、アイソトニック(等張性収縮・コンセン トリック/ 短縮性収縮.エキセントリック・伸張性収縮)運動の二種類とされて いますが、ヨーガ行者の場合は、これら二種類の筋肉トレーニングを使い分けています。

2)調気法関連のヨーガ技法

伝統的ヨーガには、百種類を越える調気法があります。ヒマラヤ山中に伝承され る調気法は世間で行じられているような調気法とは次元の異なるところで、伝承されて来ています。こうした伝統的ヨーガの調気法を疾患を持ったクライアントに伝える場合には、伝承されているままの技法を直接に教授することはでき ないため ヨーガ療法の調気法は、有害事象を回避するように修正された調気法 が紹介されています。それが世間で良く知られているウジャイとかカパラヴァティと呼ばれるヨーガ療法の調気法なのです。

3)ヴェーダ聖典関連の瞑想技法

伝統的ヨーガにおいての瞑想技法は、西暦前2~3千年にさかのぼれるとも言われ る古ウパニシャッド聖典中に、既に具体的な瞑想の仕方が以下のよう に記述さ れ、私たちがヒマラヤ山中で瞑想修行を師匠と共に行じる時も 4段階から なる瞑想修行法が私たち弟子に課せられるのは、現代のヨーガ 修行においても この4~5千年間変わることがありません。 この歴史的には仏教の開祖ゴータマ・仏陀誕生よりも遙かに古く成立し、現代 にまでヨーガ行者たちの学ぶ古奥義書の中でも最も大部である有名なブリハッ ド・アーラニァカ・ウパニシャッド(大森林派奥義書)には私たちが“ヴェーダ 瞑想”と呼ぶ古来の瞑想技法の記述があるのでそれをここに紹介します。 そのブリハッド・アーラニァカ・ウパニシャッド第4篇5章6節「ヤージナヴァルキァ師対 話篇~ヤージナヴァルキァ夫妻の対話~」には以下の ような記述があります。

「斯くしてヤージナヴァルキァ師は次のように語ったのです。 『まことに、夫であるが故に夫が愛しく思われるのではなく、真我(アートマ ン)が愛しい故に夫が愛しいのである。妻であるが故に妻が愛しく思われ るの ではなく、真我(アートマン)が愛しい故に妻が愛しいのであ る。・・・・・・・・・・・万有であるが故に万有が愛しいのではなく、真我 (アー トマン)であるが故に万有が愛しいのである。 マイットイーや、真我こ そが悟られるべきであり、耳にされる(聴聞/シュラヴァナ)べきであり、熟考 (マナナ)され、深く瞑想(二ディディーヤーサナ)されねばならぬのである。 真我(アートマン)をみとめ、耳に(聴聞/シュラヴァナ)し、熟考 (マナ ナ)の対象にするときに、一切は悟られ/意識化されるのである/アートマー  ヴァー アレ ドルシュタヴィヤ シュロタヴィヨ  マンタ ヴィヨ ニディ デャーシタビョ マイトレイ、アートマニ カルヴァレ ドルシュテ シュルテ  ヴィグナータ イダン サルヴァン ヴィディティ /The self , my dear Maitreyi, should be realized -should be heard of, reflected on and meditated upon. When the self, my dear, is realized by being heard of, reflected on and meditated upon, all this is known.」(ブリハッド・アー ラニァカ・ウパニシャッド第4篇5章6節)

これは聖師ヤージナヴァルキァ大師が、その妻マイトレーヤに尋ねられた“解脱 の境地に達する為の修行法”に対する解答であるが、ここに4段階から なる瞑想の具体的手法が開示されています。即ち、聖典や導師の教えをまず良く聞き学ぶ (聴聞/シュラヴァナ)べきであり、次にその教説を自ら良く考え(熟考/マナナ)、その熟考が無意識の次元にまで習慣化した深い瞑想(日常の瞑想/ニ ディディヤーサナ)状態になって初めて、私たちは三昧の意 識状態の中での気づき(悟り/ギヤーナ)を得ることが可能なのであると解説されています。

 

こうした瞑想の基本となる技法は、この奥義書成立から更に下ること2~3千年 後の西暦7世紀にも聖師シャンカラ大師が著した「パンチャダシ」 の第1章に 以下の様に記されています。 53節:「聖句“それは汝なり/これが梵なり”の真の意味を見い出すためには、 以 下の三つの方法が必要とされる 即ちまずはその意味の伝統的な 解説に対して敬意を払い信頼をおいて調べ土げ、その教説に耳を傾けることである(聴聞 /シャウラヴァナ/Sharavana)

又、そうした解説や導師の説明を材料として沈黙の内に判断力を働かせて分析することである(熟考/マナナ/Manana) 。 54節:こうした分析や熟考が確実なものとなり 確信が持てるようになったなら ば、心は常に真我に集中して、不断の瞑想が可能になる(深い瞑想/ ニディ ディヤーサナ/Nididhyasana)  55節:瞑想の高い次元に達した心は、あたかも風の無いところに置かれた  ろう そくの炎のごとくに安定する。瞑想者と瞑想しているという意識は、 すべて瞑 想の対象たる唯一絶対なる存在、即ち真我に没入されてしまう。こうした超常的 な意識状態が三昧(Samadhi)と呼ばれている (パンチャダ シ第1章53~55節)

ヨーガ療法として指導できるこのヴェーダ瞑想法は  認知を新たにする為の極め て有効な技法であると言えます。 以上、これら三種の技法を組み合わせて、クライアント/生徒の心身状態を正常 状態に戻す努力がヨーガ療法指導者には求められるわけです。 *一人の人間は五つの体を持っている ヨーガ行者さんたちは昔から、人間は決して肉体だけで出来ているのではないと 考えてきていました。そうではなく、五種類の体が重なっているのだと考えて きているのです。これらの各体は、英語に直すと『カバー(被い)』と訳せるイ ンドの言葉である『シェース』という言葉で呼ばれています。ですから私は、この『被い(シェース、カバー)』という言葉を『さや(鞘)』」と訳しています。

そして、私たちが普段肉体と呼んでいるのは、人間の一番外側を被っ てい る 『食物鞘』、その内側を被っているのが『生気鞘』、次に感覚器官からなる 『意思鞘』、知性の働きを司る『理智鞘』、最後に、とらわれのない喜びに満ちた 『歓喜鞘』があり、更にその内部にアートマンと呼ばれる純粋な意識(神様 の意識)が宿っており、このアートマンこそが私たちの『真実の我』なのだ と、歴代 のヨーガ行者さんたちは教え続けています。 ですから、アートマン (真我)にまで至る五つの鞘は、それがいかにも自分で在るかのように見えても、偽りの自分にしか過ぎないので、もしもそれらの鞘をいかにも自分だと錯 覚してしまうと、私たち人間は色々な苦しみに襲われるようになると、ヨーガではこれまでに教え続けているのです ヨーガ・セラピーと病気の発病原因以上 のように人間には五つの「さや(鞘)」があると伝統的ヨーガで言われてきているのですが、これらの鞘の 調子が乱れてしまうと、人間の体調が崩れて病気が 生じてくると考えられています 例えば、図1に意思鞘と書いてありますが、この意思鞘に属している(味覚や聴覚などの)感覚の器官が混乱して働く(激しい 食欲などの)ようになると、「気」の働きによってできている生気鞘の働きが乱されて、それが肉体と呼んでいる食物鞘の不調を引き起こしてくるので、その為 に、例えばぜん息になったり糖尿病になったり、癌になったりするのだと、ヨーガでは考えているのです。

 

ですから肉体の病気の発病原因は、その患者の感覚器官の働きの乱れにあると考 えますので、病気の根本治療はその患者の感覚器官の働かせ具合を直してやることであると考えているのです。こうした考え方は 現代の西洋医学では心身症の病気として数えられている疾患の発病因に対する考え方に近いものだと言えます。ヨーガでは既にはるか昔から 肉体の病気の発病原因はこうしたものだと考えられていたのです こうした病気に関する考え方を持って患者に対処 して行く 方法がヨーガ・セラピーと呼ばれている病気治療法なのです。

 

*ヨーガ・セラピスト/YTの教育現場

日本国内において日本ヨーガ・ニケタンでは(一社)日本ヨーガ療法学会が認定するヨーガ療法士養成の為に 初年度1年間(毎月1回終日開催) ヨーガ・インストラクター・コース(YIC) 次年度から2年間(毎月1回終日開催)ヨーガ・セラピスト・インストラクター・ コース(YTIC) を開催し YIC卒業生はヨーガ教師  YTIC卒業生はヨーガ療法士として(一社)日本ヨーガ療法学会が公認しています

ヴィヴェーカナンダヨーガ研究財団

これら教育内容は2019年2月にインド・ニュー デリーで20名のヨーガ/ヨーガ療法指導の専門家が招聘された“世界保健機関 (WHO)”の“ヨーガ/ヨーガ療法指導に関する指導基準策定会議”に当日本ヨー ガ・ニケタン/(一社)日本ヨーガ療法学会理事長である木村慧心もアジアから の代表として招聘され指導基準が策定されましたのでWHO基準に準じたヨーガ /ヨーガ療法指導基準がYIC/YTIC講座では学べることになっています

WHOヨーガ指導ベンチマーク策定作業部会

また、2018年に民間のヨーガ療法世界連合として設立された“Global Consortium on Yoga Therapy(GCYT)/世界ヨーガ療法連合”の事務局も当日本ヨーガ・ニケタン/(一社)日本ヨーガ療法学会が事務局を担当して世界のヨーガ療法士たちの連合を統括していますので、こうした各国の諸事情に合わせたヨーガ療法士養成講座も踏まえて我が国日本でもヨーガ療法士養成を実施しています また伝統的ヨーガをセラピーとして活用する上でまず大切なことは医学にお いても同じように、見たて/診断/アセスメントと治療/指導/インストラクシ ョンですが  このアセスメントとインストラクションの理論と実技も日本ヨーガ・ニケタンでは世界に先駆けてヨーガ教師/ヨーガ療法士要請の教育内容に採用 しています 理事長の木村慧心はインド国内で最大のヨーガ大学/大学院である VYASAヨーガ大学の客員教授として大学院学生にヨーガ療法におけるアセスメント /インストラクションの実際を講義/実技指導を行っています それほどに我が国日本は世界のヨーガ・セラピーをリードしている世界最先端の教育内容を持 ってヨーガ・セラピスト/YTたちを養成しているのです

*ヨーガ・セラピーの指導現場

日本国内においては心療内科クリニック、精神科病院デイケア(含リワーク)・ 病棟、産婦人科クリニック アルコール依存症専門病院デイケアー 薬物依存症 民間リハビリ施設内、老人施設(入所/デイケアー)法務省管轄各種矯正施設 (刑務所/少年院)等広範囲にわたって学会認定ヨーガ療法士たちはヨーガ療法の智慧を活用しています

また地震/津波/洪水の被災地においても被災者の方々 に緊急支援を実施してきた長い歴史があります 海外においては ネパール大地震被災者支援 チェルノブイリ被曝者健康促進支 援、薬物依存所専門病院医療スタッフへのヨーガ療法教育支援(タイ/キューバ) を現在も実施中です

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